人間ドックといえば、体の隅々を検査するものと考えている方は多いことでしょう。しかし、一言で人間ドックといってもその検査項目は多岐にわたり、ただやみくもに検査を受ければよいというものではありません。自分にとってリスクが高いと思われる病気や、年齢別で発生率が高いされる病気を中心に据えて検査項目を選ぶことが大切です。
今回は人間ドックにおける検査項目の選び方、各年代で重要となる検査、また人間ドックの際には必ず受けておきたい検査について詳しく説明していきます。
人間ドックの必要性と役割
人間の体というものは、一見健康に見えてもその裏で恐ろしい病魔が進行している場合があります。全く自覚症状が全くなかったのに気が付いたら深刻な病に侵されていた…ということもよく起こります。しかし、職場などで受診できる健康診断は基本的な検査項目のみの場合が多く、細かな病状や隠れた病気を見つけるには不十分といえます。そこで定期的に受けておきたいのが人間ドックです。
人間ドックは検査項目が多いので、体の状態や病について詳細に調べることができます。人間ドックで見つかる病は、生活習慣病、心臓病、腎臓病、がん、脳卒中などさまざまで、人間ドックで隠れた病が見つかって命拾いしたというケースは多々あります。このように、人間ドックは体の隠れた病の早期発見、また病につながる恐れのある危険因子を発見する役割を持ちます。
さらに、人間ドックは単に体の検査をするだけでなく、医師による面接、栄養士による食事や生活習慣改善のアドバイスなども行われます。病のリスクは生活習慣と深く関わっているので、日々の生活習慣の改善はそれだけ病気のリスクを下げることにもつながります。人間ドックは、病を見つけるだけでなく、病の将来的な予防とリスクの減少という点でも重要な意味を持ちます。
検査項目の選び方の基本
自宅で行う人間ドックといっても自分で採血を行わなければなりません。採尿は簡単だが採血は難しいと考える人もいることでしょう。人間ドッグきっと写真画像つきで検査手順をわかりやすく説明している解説書が同封されています。 採血・採尿はとても簡単に行えるように器具が作られており、おおまかな作業手順は次のような流れになります。
・採血方法
まず検査直前に石けんで両手を綺麗に洗い、どちらの手でもよいので採血用の自動針を指先に指して傷をつけます。専用のボトルに血液を数滴採取し、別の専用容器に採血した血液を入れ、ろ過(または容器を振って分離・混和)を行います。がん用と生活習慣病用で2回採血を行うタイプのものもあり、終了後はそのまま郵送するだけです。会社によっては採血のために使用した器具やごみ類を一緒に返送できるシステムのところもあります。また採血に失敗した場合、無料で代わりの器具を郵送してくれる会社もあります。
・採尿方法
専用のカップに採尿し、真空採尿管などを使用して郵送用の容器に尿を入れ封筒に入れて郵送します。
販売会社によって若干採血・採尿方法は異なりますが、人間ドックと同じレベルの検査を簡単に自宅で行うことができます。採血や採尿にかかる時間ですが、採血で約10分前後、採尿は5分もかからないという人が多いようです。
年代別、検査項目のまとめ
年代別に検査項目の選び方、また追加したほうがよいものをまとめました。
■30代
30代はそれほど病気の心配がない年代ではありますが、身内に同じ年代で病気をしたことがあるとか、以前から特定の部位が弱いという方はそれに合わせて検査項目を選びましょう。女性の場合、マンモグラフィー検査(乳がん検査)を早めに受けることをおすすめします。
■40代
40代は老化が始まる年代です。また、それまでの喫煙や飲酒などの影響が徐々に出てくる年代でもあります。この年代からは大腸内視鏡検査、胃内視鏡検査、胸部CT検査、喀痰細胞診検査などを追加検査として考えてみてください。女性はホルモンバランスの乱れと同時に骨量の減少が進むので、マンモグラフィーや乳房超音波検査だけでなく骨密度測定なども選択肢としてあります。
■50代以上
50代以上は脳の大きな病のリスクが高まるので、脳ドック(MR検査など)はぜひ受けておきたい検査です。ほかにも心臓疾患を見つける心臓ドック(心電図検査や超音波検査)、40代と同じく大腸内視鏡検査、胸部CT、喀痰細胞診なども継続的に受けたほうがよいでしょう。女性はマンモグラフィー、乳房超音波検査、骨密度測定だけでなく子宮がん検査の追加、男性はPSA検査(前立腺がん)の追加も検討してみてください。
必ず受けておきたい検査
検査項目の選び方の基本や年代別のまとめを先に紹介しましたが、ここでは人間ドックの際は「必ず受けておきたい検査」をいくつかご紹介していきます。
■大腸内視鏡検査
大腸がんは自覚症状が少なく、発見したときにはがんがかなり進行していた…というケースが多いです。大腸内視鏡検査を受けることで、進行がんだけでなくポリープなどの小さな病状も発見することができます。大腸の病気は早期発見が重要というだけでなく、便鮮血検査だけでは病が見つからないこともあるので、大腸の病を見つけるには大腸内視鏡検査が確実です。
■MR検査
MR検査(脳ドック)は50代を過ぎたら必ず受けておきたい検査です。MR検査は脳に張り巡らされた血管のみを映し出す検査であり、血管の一部が細くなっている、詰まり気味である、血管にこぶができている、といった異変をチェックできます。脳動脈瘤、脳梗塞といった重大な病の進行や兆候を発見できます。
■腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査は血液を調べることによってがんの有無を見つける検査です。男性のPSA(前立腺がん)だけでなく、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、卵巣がんなど複数のがんを合わせて検査することが可能です。
■マンモグラフィーと乳腺超音波
乳がんにかかる女性の割合は年々増加していて、数十年前は50人に1人という割合でしたが、今では15人の1人の割合で乳がんになっているといわれています。そのため以前よりも乳がん検査の重要度は高まっています。マンモグラフィーは乳がんの早期発見に欠かせない検査ですが、マンモグラフィーだけでは病変が見逃されることもあるので、一緒に乳腺超音波検査を受けることをおすすめします。
まとめ
人間ドックでは「どの検査を優先して受けるか」ということを事前にしっかりと考える必要があります。ただやみくもに検査項目を選ぶのではなく、身内の病歴や自身にとってリスクの高そうな疾患を考慮したうえで選ぶようにしましょう。
特に、早期発見が重要ながん、循環器系の疾患、脳の疾患などは命に関わるリスクが高いため、可能な限り検査項目を追加したほうがよいといえます。女性は年代にかかわらず、乳がんの検査も追加することを強くおすすめします。
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