糖尿病は、初期だと気付きにくく、病気が進行していることが少なくありません。進行すると合併症を発症することがあります。糖尿病は現代病とも言われ、この40年間で3万人から700万人にまで増加していると言われています。親族に糖尿病患者がいらっしゃる方は自分も糖尿病にかからないか不安になるでしょう。
今回は、糖尿病の基礎知識とどのような検査でわかるのか、そして糖尿病の治療法、未然に防ぐ3つの習慣をご紹介します。
糖尿病の基礎知識
なりやすい人のタイプ
下記に当てはまる人は要注意です。
☑肥満傾向である ☑食べる量が多い
☑お酒をたくさん飲む ☑野菜や海藻類をあまり食べない
☑朝食は食べない ☑ドリンク剤をよく飲む
☑運動不足である ☑脂っこいものが好き
☑ゆっくり休めない ☑甘いものが好き
☑ストレスがたまりやすい ☑食事時間が不規則
☑家族や親戚に糖尿病の人がいる ☑40歳以上である
☑妊娠中に血糖値が高いと言われたことがある
糖尿病の原因
膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが十分に働かないために、血中のブドウ糖をエネルギーとして利用しにくくなることにあります。利用されないブドウ糖が血中に増加し高血糖状態になり、その一部が尿と一緒に尿糖として排泄されてしまうのです。
糖尿病は、遺伝的な素因に、引き金となる環境因子(生活習慣)が加わって発祥します。環境因子には「過食、運動不足、肥満、精神的・肉体的ストレス、加齢」などがあげられます。つまり、糖尿病は、よくない生活習慣の積み重ねによりつくられる病気なのです。遺伝的な素因をもつ人でも、良好な生活習慣を維持することで予防できます。
初期症状
喉の渇き、痩せてくる。このような症状に異変を感じ、病院を受診、糖尿病の発見につながることもありますが、このような症状が出るのは、症状が悪化している可能性があります。糖尿病は、本人が気づかない間に病気が進行していることが少なくありません。人間ドック、健康診断で発見される方はほとんどが無症状で自分では気づいていないことが多いです。
糖尿病の種類
1. I型糖尿病
インスリンをつくっている膵臓のβ細胞が壊れてしまうタイプ。突然発症する傾向があります。
2. II型糖尿病
すい臓がつくるインスリンの量が少ない場合と、インスリンの働きが悪い場合、そしてそれらが混ざって発症するタイプ。日本人の成人の糖尿病の約95%がこのタイプです。
3. 特定の原因によるその他の型の糖尿病
膵β細胞機能やインスリン作用にかかわる遺伝子に異常があるもの、ほかの疾患(内分泌疾患、膵外分泌疾患、肝疾患)や、ステロイドの服用などにともなって発症するものが該当します。
4. 妊娠糖尿病
妊娠をきっかけに、血糖値が高くなるなどの糖尿病の症状があらわれるタイプ。妊娠前に糖尿病と診断されている人は該当しません。
こわい合併症
1度糖尿病と診断されたら、一生治療を続ける必要があり、合併症は、全身から発症します。
例えば三大合併症と呼ばれる
「糖尿病網膜症」 - 失明などの眼の病気
「糖尿病腎症」 - 腎臓悪化による透析の導入
「神経障害」 - 抹消神経をむしばみ、手足のしびれ
等の危険な合併症を起こすリスクを持ち、糖尿病は疫力低下を引き起こし、感染症へのリスクも高めます。また動脈硬化を進め、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳卒中といった大血管の病気の発症などの死に関わる重度な病気の合併症も多く見られます。
糖尿病はどんな検査で分かるの?
最も簡単な方法として尿検査で分かります。ブドウ糖は私たちの身体にとって欠かせない栄養分です。健康な人であればブドウ糖が尿中に排泄されることはありません。たとえ腎臓で濾過されても、尿細管で再吸収され、再び血液中に戻るためです。
しかし、体に異常が起きていると、血糖値が一定限度を超えたときに分解や再吸収が間に合わず、ブドウ糖が尿中へ出てしまいます。この尿中へ漏れ出したブドウ糖が尿糖です。陽性(+)の場合、糖尿病の疑いがあります。人間ドックや健康診断でも尿検査は行われますが、試験紙が市販されていますので、自分でも調べることが出来ます。
血糖値(FPG)とは
血糖とは血液中のブドウ糖のことで、エネルギー源として全身に利用されます。測定された数値により、ブドウ糖がエネルギー源として適切に利用されているかがわかります。数値が高い場合は、糖尿病、膵臓癌、ホルモン異常が疑われます。
糖尿病の数値
まず血糖値の検査で調べる基準値としては、以下の図のようになっています。次の項目から検査方法について説明します。
75gブドウ糖負荷試験
詳しく糖尿病の値を調べる方法です。検査当日の朝まで10時間以上絶食した空腹のまま採血し、血糖値を測ります。次に、ブドウ糖液(ブドウ糖75gを水に溶かしたもの、またはデンプン分解産物相当量)を飲み、ブドウ糖負荷後、30分、1時間と2時間後に採血し、血糖値を測るという検査です
人間ドックで行う糖尿病の検査
人間ドックでは、病気の治療を目的とした精密検査を行うものではなくて、病気の前段階の状態を発見することが目的です。人間ドックでは検査項目も多いために、より詳しく自分の健康状態を調べることができます。
糖尿病の検査はもちろん、他の生活習慣病、ガンなども検査もありますので、これらの病気を早期に発見できる可能性が、人間ドックの方がはるかに高いです。病気にならないための指導が行われることも人間ドックの大きなメリットです。
人間ドックの種類と費用
日帰りドックや1泊2日人間ドック、肺ドック、脳ドックやレディースドック、などもあります。これらの種類やネーミングは、施設によってさまざまです。人間ドックは病気の治療が目的ではないので、健康保険が適用されません。そのためとても料金が高いです。補助金制度もありますので、まず加入している健保の担当者に問い合わせをしてみましょう。人間ドックは費用以上の価値があるはずです。
糖尿病の治療
糖尿病の治療には、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」があります。
適切な食事内容や食事のとり方へと見直し、毎日の運動習慣をつけることで良好な血糖コントロールが見込めますこれらの治療を2~3か月続けても改善しない場合には、次のステップとして「薬物療法」の開始を検討します。それでも十分な効果が得られないケースでは、インスリン製剤の注射を行うことがあります。
糖尿病の治療の目標
血糖値を正常レベルかつ、低血糖にならないよう避けることです。血糖値を下げ過ぎると、命にまでかかわります。時間、食事関係なく、血糖値の値が低くなり、尚且つ血糖値のふり幅が少なくなることが目標です。
目標数値
HbA1C(NGSP)とは
HbA1c(ヘモグロビン・エーワン・シー)は、過去1~2ヶ月の血糖の平均的な状態を反映するため、糖尿病のコントロールの状態がわかります。また、空腹時血糖(FPG)が126mg/dL以上かつHbA1c 6.5%以上なら糖尿病と判断します。
早期発見で、合併症ごと未然に防ぐ
糖尿病は現代病
日本人の4人に1人が糖尿病か糖尿病予備群と言われています。自覚症状がなくても、一度人間ドックを受診し、調べてみることをおすすめします。高血糖が続くと、神経障害、網膜症、腎症、動脈硬化、歯周病など様々な合併症を発症する可能性が高いため、血糖値やHbA1c値だけでなく、合併症が起こっていないかを知ることも重要です。
糖尿病を未然に防ぐ3つの習慣
1.食生活の見直しが最重要課題
毎日の食事日記をつけることで、自分の食事パターンの問題点が見つかることがあります。「何をどのくらい食べたか」を記録してみましょう。
2.適度な運動を毎日の生活にとり入れましょう
運動は脂肪を分解し、糖尿病の危険因子である肥満を解消します。さらに、血液中のブドウ糖が細胞内にとり込まれる働きが活性化するため、血糖値を下げる効果もあります。ウォーキングやラジオ体操、水泳などの全身運動を、できれば毎日続けましょう。
3.定期的に受診し、血糖のコントロールを
糖尿病は、血糖値を適正範囲にコントロールできれば決してこわい病気ではありません。家庭で尿糖の検査が行える尿検査紙も市販されていますので、コントロールの目安として利用するのもよいでしょう。もちろん自己診断は禁物です。人間ドックの定期的な受診や、かかりつけ医に相談しながら、血糖値のコントロールに努めましょう。
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