近年、進歩し続ける医療ですが、大腸がんにかかる人の割合や大腸がんが原因で亡くなる人の割合は増え続けています。2014年には男性のがん死亡原因3位、女性では1位となっていて、2020年の東京オリンピックが開催される頃には1位になると予想されているくらい、大腸がんは激増しているのです。
胃や食道と同じように早期段階では自覚症状がほとんど現れない大腸がんですが、人間ドックの大腸内視鏡検査であれば早期の発見が可能なのです。
人間ドックの大腸内視鏡検査とは
人間ドックの大腸内視鏡検査は、大腸カメラまたは下部消化管内視鏡検査と言われます。内視鏡を肛門から挿入して、直接大腸全体の粘膜の様子を詳細に観察する検査です。
大腸内視鏡検査は苦痛を伴うといったイメージを持つ人が多いですが、実際は予め鎮痛剤などを投与してから検査をするので、ほとんどの場合は大きな苦痛はありません。検査も5分から30分程で終了します。しかし、腸の長い方や、開腹手術後などの原因によって腸が癒着している方は、多少の苦痛を感じることがあります。
肛門から挿入した内視鏡が大腸の一番奥の盲腸まで到達したら、内視鏡を抜きながら病変の有無を調べます。この時、テレビモニター画面を直接見ながら、医師から説明を受けることも可能です。
盲腸から直腸までを詳細に調べて、もしも病変が発見されたら、拡大して病変の表面の模様を調べたり、色素をまいたりして、さらに詳細な診断をします。詳細に診断を行うためには、十分に腸の洗浄をする前処置が必要です。
必要な場合は、粘膜の一部分を採取する組織生検を行って、顕微鏡を使用して組織が悪性か良性かを調べる病理診断をします。病変の大半は内視鏡治療だけで完了ですが、病理診断によっては外科手術が必要になることもあります。
内視鏡手術で病変を切除する方法とは
人間ドックの大腸内視鏡検査で発見されたポリープは、がんに変化したポリープとがんに変わる可能性があるポリープは、切除の対象となります。ポリープの形状や大きさによって切除する方法は違いますが、大腸粘膜には知覚神経がないので、どの切除方法でも痛みを感じることはありません。
代表的な切除方法としては、まず隆起のあるがんに有効なポリペクトミーです。
内視鏡の先端部分から出したワイヤーをポリープの隆起部分にかけて、ワイヤーを徐々に締めていき、ワイヤー電流を流してポリープを焼き切ります。この電流は人体に影響のない高周波電流ですので心配ありません。鉗子を使用して、焼き切ったポリープを取り出したら摘出終了です。
次に内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、平坦なポリープや大きめのポリープに有効です。粘膜の下に生理食塩水を注入してコブのようにポリープを盛り上げてから、ワイヤーをかけて締めていき、高周波電流を流してポリープを焼き切ります。
また、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と違い、熱を加えずに専用のワイヤーで切除を行うコールドポリペクトミーは、ポリープが小さい場合に有効で出血などの合併症がEMRよりも少ないです。
他にも、早期がんで大きいポリープに有効なのは、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)です。ポリープの粘膜の下に生理食塩水を注入して盛り上げて、1つの塊で病変を電気メスによって切除します。
人間ドックの大腸内視鏡検査によってわかる病気
人間ドックによる大腸内視鏡検査では、色々な病気を発見することができます。
まずは、がんや大腸ポリープ。人間ドックの大腸内視鏡検査で発見されるほとんどの良性腫瘍は、腸管の内側に出ている大腸ポリープと言われる粘膜の突起物です。形はキノコのようで、腺腫とそれ以外に分類される大腸ポリープは、腺腫の一部ががんになることがあります。がんができた場所によって、肛門がん、直腸がん、結腸がんと言われますが、これら全てを含めて大腸がんと言われます。
外側へ腸の壁の一部分が飛び出して、袋状になった大腸憩室。歳を重ねるとともに腸の壁が弱くなっている部分で起こりやすく、慢性的な便秘で腸の内圧部が上昇することが主な原因と言われます。
便の通り道の肛門付近の直腸に炎症があらわれる直腸炎は、抗生物質や潰瘍性大腸炎、感染性のアメーバ性大腸炎によるものがあり、悪化すると出血や潰瘍、発赤がみられます。
過敏性腸症候群の原因はストレスと言われ、便秘や下痢や腹痛などの症状があらわれます。生活スタイルのか改善や薬による治療が必要となります。
何らかの原因で大腸への血流が悪化し、腸の粘膜に潰瘍や炎症などがあらわれる虚血性大腸炎。昔は高齢の方に多くみられていましたが、最近は若い世代にもみられ、そのなかでも女性に多く症状があらわれています。
人間ドックの大腸内視鏡検査のデメリットは?
人間ドックで大腸内視鏡検査をするとき、挿入手技が未熟な場合に伴う違和感や痛み、肉体的な負担がデメリットと言われます。内視鏡の細径化が進んでいる最近は、内視鏡を挿入する時の負担は軽減されてきていますが、やはり内視鏡を肛門から挿入する時に違和感や痛みを伴う場合はあります。また、大腸内を内視鏡が移動する時に、少なからず腸壁や粘膜が圧迫されるというリスクも伴います。
これらは、寝ているだけで終了するCT検査に比べるとデメリットではありますが、最近は進歩する鎮静薬と挿入技術、また熟練した医師にかかることで、人間ドックの大腸内視鏡検査に伴う苦痛は解決されつつあります。
上部消化管より複雑な形態の大腸の内壁には無数のヒダがあり、粘膜の表面積を拡大することによって、腸管を通る食べ物から栄養を沢山吸収できる仕組みになっています。しかし、この無数のヒダによって粘膜の基底部が覆われてしまっていることがあり、人間ドックの大腸内視鏡検査では観察が不可能な部分が生じる場合があります。
その点でいうと、放射線を色々な方向から照射するCT検査は、ヒダの裏側まで観察することができます。しかし、死角は少ないものの、5mmもない小さいポリープや突起のないポリープは検出しにくいです。また、確認できた病変を残便かポリープか判別することが困難です。
このような場合は、再度大腸内視鏡検査を行い、直接目で見て診断する必要があるのです。
まとめ
沢山の方が患っている大腸がんですが、早期がんや腺腫など予備の段階で発見することができれば、楽に治療を終えることができます。進行がんとして見つかったがんの大部分は数年前には小さい腺腫で、その時に切除の機会があるのに見逃してしまっているのです。
早期では自覚できる症状がほとんどない大腸がんですが、大腸内視鏡検査によって見つけることができます。進行してしまってから大腸がんを発見して大きな手術になる前に、人間ドッグの大腸内視鏡検査を受けて、早期発見・早期治療で治しましょう。
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