PET検査(陽電子放射断層撮影)という言葉をご存知でしょうか?がん検診やがん治療に関心のある方には馴染みが深いかもしれませんね。PET検査とは、全身を調べることができるがんの検査方法のひとつです。近日TVなどで取り上げられていることから、聞いたことがある!という方も多いでしょう。
それでは、具体的にどのような検査をするのでしょうか?本当に全てのがんを見つけることができるのでしょうか?そんな様々な疑問が解消できるよう、PET検査について詳しく紹介していきます。
PET検査(陽電子放射断層撮影)のしくみ
PET検査(陽電子放射断層撮影、Positron Emission Tomography)とは、全身のがんを調べることができる検査方法のひとつです。通常、がん細胞というのはある程度成長してからでなければ発見が難しいとされています。その点、PET検査は比較的小さながん細胞であっても発見することができる、というのが特徴です。
ですが、一体どうしてそのようなことができるのでしょうか?PET検査がどのようにしてがん細胞を発見するのか、そのしくみを詳しく見てみましょう。
がん細胞には、正常な細胞に比べて3〜8倍のブドウ糖を取り込む性質があります。PET検査ではその性質を利用します。まず、ブドウ糖に近い成分(18F-フルオロデオキシグルコース、FDG)を含む検査薬を体内に注射します。その後しばらくしてから全身を撮影すると、ブドウ糖が多く集まる部位を調べることができます。つまり、ブドウ糖で目印をつける形で、がん細胞を発見することができるのです。
従来のレントゲンなどによる検査では、映し出された造形からがん細胞を判断する方法をとっていました。一方PET検査では、がん細胞のもつ性質を利用して判断することで、従来見つけられなかったような小さな段階のがんでも見つけることができるというわけです。
PET検査がとても画期的な方法であることがおわかりいただけたかと思います。ですが、本当にいいことずくめなのかどうか、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。つづいては、PET検査のメリット・デメリットについて詳しく触れていきます。
こんな人にオススメ!PET検査のメリット
PET検査(陽電子放射断層撮影)の最大の特徴は、全身のがん検査を一度に行うことができることにあります。また、準備から検査終了までにかかる時間はおよそ2時間。比較的短時間で検査を済ますことができる、というのは嬉しいポイントですね。このような特色から、ご高齢の方や体力に自信のない方、他のがん検査でつらい思いをした方でも安心して受けることができます。
そして、この検査からわかることはがん検査の有無のみではありません。先ほどのしくみの解説で述べた通り微細ながんであっても発見できるのはもちろんのこと、がん細胞の良性・悪性の区別やがんの進行度合い、がんの成長の仕方や性質を推定することもできます。そのほかに、がんの広がり方、つまり転移の仕方を把握することも可能です。これは全身を一度にスキャンするPET検査ならではのメリットと言えますね。
また、検査薬の注射のあとは基本的に安静にしているだけ。内視鏡検査や乳がん、子宮がん検査の際にともなう身体的・精神的負担が少ないことも魅力です。以上を踏まえると、受ける人にとって負担が少ないことが最大のメリット、と言えるかもしれませんね。では、逆にPET検査が苦手とするのはどのようなことなのでしょうか?次はPET検査のデメリットについて見ていきましょう。
PET検査の弱点とは?デメリットと注意点
これまでの紹介を読んで、「PET検査(陽電子放射断層撮影)さえ受ければ他のがん検査は不要なのでは?」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、PET検査で全てのがん細胞を発見できるわけではありません。PET検査がどのようながん細胞を苦手としているのかについてご説明します。
前述した通り、PET検査はブドウ糖を用いてがん細胞を検索します。しかし、がん細胞の中にはさほど糖を必要としないものもまれに存在します。そのようながん細胞や、散らばって存在しているごく小さながん細胞に対してはPET検査の有効性は低いと言われています。
逆に、糖が集まりやすい臓器も存在します。泌尿器科系や脳、心臓、肝臓がそれにあたります。そのような部位においても、検査薬を用いた判別が難しくなるため見つけることができない場合があります。これらのがん細胞や部位においては、別の検査方法と併用することで検査の精度が高まります。よく挙げられるのがCT検査との併用です。
PET検査でのブドウ糖による検出と同時に、CTスキャンで画像による検出も行うことで検査の精度を高める方法です。二方向からがんを検索することで、より詳細に体内を調べることができます。
また、注意したいのが糖尿病の方の検査です。糖を利用した検査となるため、血糖値が150~200mg/dlを超えている方は診断が難しい場合があります。以上のように、薬剤での検出ならではのデメリットがあることも覚えておくとよいですね。
PET検査当日の流れ
これまでの説明で、PET検査(陽電子放射断層撮影)のおおまかな内容はお分かりいただけたかと思います。それではいざPET検査を受けるとなると、当日はどのようなことをするのでしょうか?また、お金の面が気になる、という方もいらっしゃるかもしれませんね。ここでは検査当日の流れと、その注意点について紹介します。
PET検査では、検査の5時間前から食事をとることができなくなります。検査前の摂取は水または甘みのないお茶にとどめ、水分補給をしっかり行いましょう。全身をスキャンする前に、先ほど紹介したブドウ糖に近い成分のFDGを注射します。これでブドウ糖が注入され、がん細胞にマーキングすることができるようになるわけですね。FDGは全身に行き渡るまで少し時間がかかるため、30分程度安静にします。
その後、PETスキャナーの中で全身の撮影を行います。こちらも30分ほどかかると考えておいていいでしょう。これで検査は終了ですが、検査後にも注意点があります。検査薬として注入したFDGの排出に、約1日かかるという点です。この間は体内に検査で発生した放射能が残っている状態となるので。妊婦さんや乳幼児と接触しないようにする必要があります。また、体外へは尿として排出されるため、トイレのあとにはよく手を洗うことも重要です。
以上がPET検査のおおまかな流れになります。料金は病院や施設によって差がありますが、1回の検診でおよそ10万円かかると言われています。また、がんの可能性が極めて高い方や再発の可能性がある方は保険の対象となるため、確認しておくことをオススメします。
まとめ
いかがだったでしょうか。PET検査が従来のがん検査とは違ったものであることや、検査にあたっての注意点などについて理解を深めることができたでしょう。がん細胞に対して万能の検査というわけではありませんが、がんを早期に発見し、リスクを未然に防ぐために有効な手段であることは確かです。
PET検査の特性を理解することで、より精度の高いがん対策を行うことができます。ほかの検査との併用も視野に入れつつ、自分にマッチしたがん検査を検討してみてはいかがでしょうか。
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